2009年06月04日
正五角形を作図する
中学2年の数学の授業で、正多角形を作図する、ということをやった。
正三角形、正四角形(正方形)、正六角形、正八角形...と作図していくと、
「正五角形は描かないのか?」
と数学教師にいわれ、
「描けるの?」
と聞き返した。
「描ける」
と数学教師は断言したものの、
作図方法は教えてくれなかった。
個人的にも聞くのがシャクだったので、
なんとか自分で書いてやろうと思ったが、
結局描けずじまい。
自分の中でなんとなく有耶無耶したまま月日が流れ....今に至る
このインターネット全盛の御時世では、
作図方法を探せば、いくらでも出てくるので、
作図方法を覚えるのは難しくない
しかしその原理(理論と言い換えてもいい)まで説明してくれるものはあまり多くない。
なぜその方法で正五角形の作図ができるのか、
逆に、正五角形を作図するために何を意図して描いてゆけばいいのか。
仕事の合間に(w 作図方法についていろいろ考えてみた。
なんとか結論めいたところまで達し、作図までたどり着けたので、
自分の思考をまとめる意味で、ここに覚書をしておく。
(ちなみに管理人は理系ですが数学系の仕事をしているわけでもなんでもございません。
ゆえにその筋の人が見るとちゃんちゃらおかしいとおもいますが、
生暖かい視線でご覧ください)
※以下の文章にはところどころπという文字が出てきます。フォントの具合によってはアルファベットのn(エヌ)に見えるかもしれませんが、これは円周率を表すギリシア文字のπ(パイ)です。ご了承ください
(1)単位円に内接する正多角形(正k角形)
「すべての正多角形は、その頂点を同一円周上に持つ」
逆にいえば、
「円を描き、適当に点を取ることによって、正多角形が描かれる」
ということである。
たとえば、正三角形の場合。
まず円を描く(このときの半径を1とする。半径1の円を単位円という)。
円の中心から任意に半径を一本とり、そこから中心角120度の扇形を切り分ける。
120度は360度の3分の1であるから、円は3つの扇形に分けられ、
かつその弦の長さは等しいため、ここに正三角形が出来上がる。
正方形なら360°/4=90°、六角形なら360°/6=60°、八角形なら360°/8=45° の
中心角で扇形にk分割してやり、1辺を扇形の弦の長さとする正k角形が出来上がる。
一般的にいえば、
「円を合同な扇形にk等分(中心角は2π/k)したとき、その弦によって正k角形を成す」
ということになる。kは3以上の自然数であり、正五角形だろうが、正100角形だろうが、この特徴は変わらない。
(ちなみに2π=360° いわゆるラジアン角表記にしてあります)
(2)2π/5のもどかしさ
前項でえられたことを正五角形に当てはめると、
「円を中心角2π/5(=72°)の扇形に分割できれば、正五角形は描ける」
ということになる。
実際、中学生当時の自分もここまではたどり着けた。
しかし面倒なのはその次のステップである。
「では72°をどうやって作図するのか?」
中学生の自分はここで立ち止まり、前に進めなかったのである。
話を少し戻して考えてみる。
120°、90°、60°、45°...
それぞれ、正3,4,6,8角形のときの扇形の中心角になるが、
これらの角度は実は作図が可能である。
なぜなら、コンパスと定規だけで垂直に交わる線は描けるので90度は作図できるし、
90度の二等分線も作図できるので45度も作れる。
(同様の理由で、45度の半分の22.5度=正16角形の中心角 も作図できる)
また、60度も作図できる(任意の長さを1辺とする正三角形は容易に作図できるため)ので、
180度-60度=120度(3角形)や、60度(6角形)、30度(12角形)、15度(24角形)なども作図できる。
ここに挙げられた正n角形は、すべて同様の手法で作図が可能である。
(まあ、正三角形はこんな面倒な作図しなくても描けるけど)
さて、どうにかして正5角形の中心角である72度は作図する方法はないのだろうか?
(3)三角関数へ
72度という角度を作図するための特徴を得るために、三角関数を導入する。
なぜ三角関数か、というと
xy平面に単位円x^2 + y^2 = 1 を描いたとき(x^2はxの2乗をあらわす)、
この単位円上の点はx軸からの回転角をθとすると、
座標(cosθ,sinθ)であらわすことができるからである。
すなわち、x=cos(2π/5)、またはy=sin(2π/5) という直線が作図できれば、
単位円との交点より[cos(2π/5),sin(2π/5)]の座標が明らかとなり、
この点と原点を結ぶことにより、2π/5、すなわち72度を作れるからである。
(4)2π/5の個性を生かす
2π/5にしかない特徴をいかして三角関数の方程式をたて、これを解くことができれば、
2π/5のcosまたはsinが求まるはずである。
では2π/5にしかない特徴とは何か?
実は自分がこれに気がついたとき、
なんともいえない驚きに見舞われたのだが...
2π/5の特徴は、
π - 2π/5 = 3π/5
ということである。
いや、この式そのものは当たり前の計算なのだが、
三角関数においてπという数字が特殊な意味をもつ、というところが圧巻なのだ。
実は(などと大げさに言うことはないが)、
sinθ = sin(π-θ)
である。
ということは、
sin(2π/5) = sin(3π/5)である。
(5)一気に解決まで
ここで π/5=α と置いてみる。(つまりα=36°になる)
sin2α = sin3α
この方程式は解くことができる。
三角関数の加法定理(倍角定理&3倍角定理でもいいが)を使うと、
2sinαcosα = sin2αcosα + cos2αsinα
2sinαcosα = 2sinα(cosα)^2 + {2(cosα)^2 - 1}sinα
sinα≠0であるのでこれで両辺を割り、cosα=Xと置くと、
0 < X < 1 で
2X = 2X^2 + (2X^2 - 1)
4X^2 - 2X - 1 = 0
これは単なる2次方程式なので、解の公式を用いて解くと、
X = { 2 ± √(2・2+4・4) } / ( 2・4 )
= ( 2 ± √20 ) / 8
約分し、Xの範囲を考えれば、
X = cosα = cos(π/5) = (1 + √5) / 4
となる。
(6)再び作図へ
当初の予定では72°の三角関数を求めるつもりだったが、
最終的に36°の三角関数(余弦)を求めることができた。
結果としてはこれで十分である。
なぜなら、倍角公式によって、
cos2π/5 = 2 {cos(π/5)}^2 - 1 = (√5 - 1) / 4を求めることはできるし、
そもそも36°が作図してしまえば72度を描くのは難しくない。
(180°-36°) / 2 = 72° なのだから。
じゃあ、肝心の
cos(π/5)を作図できるのか、という話になるわけだが、
これは可能である。
この値には√5という無理数が含まれているが、
ピタゴラスの定理より直角をはさむ2辺が1:2のとき、斜辺は√5の長さになる。
単位円の半径1であり、その2倍の長さを作図することは容易なので、
√5という長さは簡単に得られるのである。
(ぶっちゃけると原点Oと座標(1,2)の距離が√5である)
√5が得られてしまえば、そこから単位円の半径1を足して4等分することはできる。
x = (√5 + 1) / 4 とか y = (√5 + 1) / 4 などの直線が引ければ、
36°{ cos36° = (√5 + 1) / 4 }や54°{ sin54° = (√5 + 1) / 4 }といった
正五角形に関連ある角度が得られるので、
途中経過はどうあれ、作図を完遂することができるわけである。
(7)精練された作図へ
ググってみれば正五角形の作図方法は結構たくさんあることがわかる。
どの作図方法も、72度がどうのとか、三角関数がどうのとかいう話にはならない。
魔法のように、そのやり方に従っていくと知らず知らずのうちに正五角形が出来上がっている。
でも、ここまでいろいろごちゃごちゃ考えてくると、
その作図の中に見えてくるものがある。
それは√5。
どのおきまりの作図法も、必ず1:2:√5 (または 1 : 1/2 : √5 /2)を利用している。
そしてそれを合理的に作図の中に組み込んで、
より簡潔に正五角形を描けるようにしているのである
(簡潔にすることは作図誤差を少なくする意味で重要)
計算式を並べながら導いた結論が、
洗練された形でそこにあるという事実。
中学生のときにもらった「宿題」はそんな感動を僕にくれました。
- by 4R管理人
- at 00:50
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